サービス・商品食品トレーやカップ麺容器の原料になるポリスチレン(PS)樹脂の在庫が薄い。JPCA(石油化学工業協会)の月次統計から平時出荷ベースで単純計算すると、2か月分しかない。4月中旬以降、PSシートを起点にフィルム類でも値上げが続き、メーカーからは出荷制限や受注制限の通知も出始めた。(編集長・赤澤裕介)
JPCAの月次統計によると、2025年12月末時点のPS在庫は8万4000トン、月間出荷は4万1500トンだった。単純計算で2.0か月分になる。石化協が3月17日に示したポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)の在庫は国内需要の3.5〜4か月分だが、PSはその半分以下だ。3月時点で示された「4か月分」はPE/PPが中心で、PSの薄さまでは示していなかった。
在庫の薄さは、価格改定の速さにも表れ始めた。食品トレー原料のPS樹脂は、DICが4月1日納入分から1kgあたり100円以上、PSジャパンが4月1日出荷分から同90円以上の値上げを打ち出した。中間素材でも、積水化成品工業が発泡PSシートを4月21日出荷分から同120円、三菱ケミカルがOPSシート(弁当容器のフタ・トレー用)を4月16日納入分から同125円引き上げる。
PSの薄さは単独の問題ではない。PS系からPE・PP系、収縮フィルムへと値上げが広がっている。以下は4月5日時点で確認できた主な川下の値上げだ(各社発表ベース)。

今回は値上げだけで終わらない。川下でも、数量や納期を絞る文言が通知に出始めた。積水化成品工業は3月30日の発表で「今後の状況次第で追加値上げや出荷数量の調整を検討せざるを得ない」と明記した。フクビ化学工業は4月1日から全製品の供給制限に入り、「過去の取引実績にかかわらず受注制限や納期調整を行う」とした。
食品トレーの最終製品メーカーからは、大規模な価格改定はまだ出そろっていない。エフピコは2025年11月期決算説明会で、継続的な値上げなしに利益率を維持するのは困難との認識を示していた。
物流資材、供給制限の兆し
包装資材の波は、物流現場にも及ぶ。パレット荷崩れ防止に使うストレッチフィルムの原料であるLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)は、東ソーが1kgあたり90円以上、旭化成が同120円以上の値上げを表明した。
値上げと並行して、供給不安をにじませる動きも出ている。東洋紡は4月3日にLLDPE系フィルムの値上げを4月21日納入分から実施すると公表した。3月26日には供給安定が困難だとして過剰発注の自粛を取引先に要請している。包装資材の流通関係者からは、ストレッチフィルムの出荷停止や梱包用テープの値上がりを伝える声も出始めた。ストレッチフィルムや梱包資材の供給が減れば、パレタイズの安定や積載効率に直結する。
樹脂在庫があっても、現場が使うフィルムや保冷箱が同じように届くわけではない。PSだけでなく、PE系でも供給制約に触れる通知が出ている。プライムポリマーは3月9日に供給制約の顕在化を取引先に通知し、日本ポリエチレンも3月10日に供給への影響を告知した。
赤澤亮正経産相は3月30日、供給の偏りや流通の目詰まりがあれば先手で取り組むと述べた。だが政府のタスクフォース(4月2日初会合)で優先順位が高いのは医療用プラスチックだ。配分調整が本格化した場合、食品包装や物流資材は後順位に置かれる可能性がある。PE・PPの在庫月数だけで安心すれば、食品トレーやフィルム、保冷箱で始まっている値上げと供給不安を見誤る。
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